
2009年製作(インド)170分
監督:ラージクマール・ヒラニ
キャスト
アーミル・カーン(ランチョー役)
カリーナ・カブール(ピア役)
R・マドハヴァン(ファラン役)
シャルマン・ジョシ(ラージュー役)
個人評価:★★★★☆
映画「きっと、うまくいく」あらすじまとめ

インドの優秀な理系大学ICEI工業大学の卒業生だったファルハーン(R・マドハヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョシ)は、親友のランチョー(アーミル・カーン)に会えると期待して、同級生のチャトゥル(オミ・ヴァイディア)に呼び出された。
卒業してから大手企業の副社長に上り詰めたチャトゥルは、常に比較されていた自分とは対照的なランチョーと“10年後にどちらが成功しているのか?”という約束を果たす為に、自分の成り上がりを見せつけたかったのである。
しかしランチョーはその場に現れなかった。
そこから、3人はランチョー探しの旅と、彼らの大学時代の回想物語が始まっていく。
ICEI工業大学の学長は、生徒に与えた課題を事務的にこなして一流企業に送り込む事を教育理念としていた。生徒の意思は一切排除して徹底的にカースト制度の厳しさを叩き込む。
その教育方針とは相反するランチョーは心から学ぶ事を愛し、課題そっちのけで興味を持った事に夢中になっていく。そんなランチョ―は、問題の生徒として学長や教授たちから目を付けられてしまう。
ある生徒が授業そっちのけでカメラ付リモコン飛行機の開発に取り組んでいたが、学長に留年を通告され、その生徒は首つり自殺をしてしまう事件が起きてしまった。
また、ある時、学長はファルハーン、ラージュー、ランチョー達が一緒に居る事が問題であると見なして、ラージューは与えられた課題をこなす優等生のチャトゥルと相部屋になった。
ランチョー達はそんなチャトゥルを懲らしめようと、ヒンドゥー語をあまり分からないチャトゥルが生徒達の前でスピーチをする事になった。台本に間違った翻訳に書き換えて、チャトゥルは大恥をかいてしまう。そこから、チャトゥルはランチョー達に執念を燃やすことになる。

ランチョーは様々な偶然で出会いを繰り返し、学長の2番目の娘ピアと出会い、恋に落ちていく。
ある日、ランチョ―達は学長の家に忍び込み、ピアに告白するが、学長にばれてしまい、学長はラージューを呼び出してランチョーを退学させるように脅す。
追い詰められたラージューは部屋の窓から飛び降り自殺を図るが何とか生き延びる。
親友のランチョーとファルハーン達はラージューの看病を続けていた。
ランチョーは何度も懇親的にラージューに話しかけ続ける事で、ラージューの意識が次第に回復していった。
そうこうして、ファルハーンは目指していた写真家、ラージューはある企業に就職が決まるが、それが気にくわない学長はラージューを卒業試験で落とそうと企てる。
ランチョー達はラージューを助けるために執務室から試験用紙を盗むが、ばれてしまい、ついにはランチョーは退学を命じられてしまった。
その後、学長の長女モナが破水してしまい、偶然通りかかったランチョー達は無事に赤ちゃんを取り上げる事に成功する。この出来事で、学長は、以前から学業トップで人間的にも優れていると認めていたランチョーを首席で表彰する事を決意する。
現在の話に戻り、ランチョーを探し求めているファルハーンとラージュー達は、ランチョーの秘密の生い立ちを知る事になっていく。
ストーリーは一気に思わぬ方向に展開していきます。続きは本編をお楽しみください。
映画「きっと、うまくいく」のキャスト

日本人的美的感覚としては、どの役者も美男美女とは言えないが、唯一、主役ランチョー役のアーミル・カーンだけがスター性のあるオーラを放っていた。
やはり濃い顔をしており目力が強い。しかしインド人独特の暑苦しさはなく笑顔が爽やかである。インドのスーパースターであるのは十分納得できる。
カーンは当時、びっくりの44歳だが、しわが一つもなく、違和感なく大学生役をこなしていたのには感心する。
インド人女性は世界一美しいと思っているが、ランチョーの恋人ピア役のカリーナ・カプーは日本人受けするような美貌ではなかったのが残念。何故この女優が選ばれたのだろうと思うが、他国の人々からすれば容姿端麗なのだろう。
学長の暑苦しさは役にぴったりはまっており、怒った顔も迫力がある。それだけに、ランチョーを認めた時に見せた表情は、ギャップの分だけ優しさが増していたように感じた。
映画「きっと、うまくいく」のストーリー

正直、ストーリー的には安っぽいB級映画並みの、あり得ない偶然や、わざとらしい展開が続くが、不思議な事に、この映画は全てが許される。
インド特有の突然陽気に踊りだすミュージカルは嫌いではないし、ノリノリの曲だったので、正直楽しかった。
「Aal Izz Well」(All is well)(全て大丈夫)の歌は映画が終わっても心地よく耳に残る。
ストーリーで感動を与えるというよりも、エンターテイメントとして舞台を観る感覚で、芸術を楽しめる作品である。
自分が仕事で疲れたり、スランプに陥ったりした時、何度も観ても心をリフレッシュされそうな作品である。
映画「きっと、うまくいく」を観て考えた事

旧態依然のままのカースト制度が残っているインド。貧しい人達がどんなに努力しても上流社会にのし上がっていけない。上流社会にいる人達は高等教育を受けてさらに経験を積み、両親からは財産だけでなく人脈も引き継がれて、さらに財産を増やしていく。
学業がダメでも、家庭が裕福なら、その息子・娘達は湯水のようにお金を使って遊んでも上流社会の仲間入りができる。
一方で、高等教育を受けても、落ちこぼれた生徒たちは上流社会に入れない。
裕福でない学生が勉強で落ちこぼれてしまったら、将来は夢も希望もない絶望の世界が待っている。そういう教育を押し付ける国々では生徒達の自殺が後を絶たない。
この映画では、そういった精神的に追い込まれている学生を増やしている、インドの教育体制を風刺している部分がちりばめられている。
インドではエンジニア、ITプログラマー、医者、弁護士などの職業だけが社会の成功者とされていて、本当になりたい職業に憧れを抱く若者の可能性を潰しているのが現状である。
そういう若者達に「詰め込み教育に押しつぶされるな」「やりたい職業に就きなさい」「悩みを相談できる仲間を作れ」、そして、この映画で歌われていた「大丈夫、きっと、全てうまくいく。前向きに生きよう」という強いメッセージが込められている。
そうです。人から傷つけられても、裏切られても、失敗しても、一人で悶々と悩んで絶望してはいけません。仲間なり、家族なり、両親なりに相談するだけで悩みは徐々に消えていくものだし、その後は自分の目指す大好きな希望に向かって進めばいいのです。
体の中の毒を吐き出して、希望という新鮮な栄養を取り入れていきましょう。
それはランニングや筋トレや趣味のスポーツでもできますので、お試しください。
