
2004年製作(アメリカ)133分
監督:クリスト・イーストウッド
個人評価:★★★★☆
キャスト
クリスト・イーストウッド(フランキー・ダン)
ヒラリー・スワンク(マギー・フィッツジェラルド)
モーガン・フリーマン(エディ)
ジェイ・バルチェル(デンジャー)
マイク・コルター(ビック・ウィリー)
映画「ミリオンダラー・ベイビー」あらすじまとめ
薄汚れたさえない“ヒット・ピット・ジム”というボクシングジムのオーナー兼トレーナーのフランキー・ダン(クリント・イーストウッド)は止血のカリスマトレーナーである。
ジムの看板選手であるビッグ・ウィリー(マイク・コルター)は勝利を続けているが、慎重なフランキーはビック・ウィリーのタイトル戦を一向に組まない。
フランキーは、元ボクサーのエディ(モーガン・フリーマン)が現役時代に無理なマッチメークをして片目を失明させたしまったトラウマがある。その為にボクサーの安全を優先に考えて、マッチメークには慎重になってしまった。その元ボクサーのエディは、ヒット・ピット・ジムの運営を住み込みで手伝っている。
そして、とうとうビッグ・ウィリーは他のマッチメーカーに引き抜かれて、ヒット・ピット・ジムを去ってしまった。
田舎出身のマギー(ヒラリー・スワンク)はチャンピオンを目指してヒット・ピット・ジムに乗り込んで、フランクにトレーナーになってほしいと何度も何度も懇願する。
マギーは片親の母と兄弟でトレーラーを借りて貧しい暮らしを続けている31歳の女性。
ウエイトレスとして働きながら、ジム代や生活費を稼いで練習を続けている。フランキーに何度断られても、心を折らずに練習を続けるマギー。ついにエディやフランキーは根負けして、フランキーはマギーのトレーナーに就く事になった。
フランキーの教えを忠実に守るマギーは豪快なKO勝利を続け、実力だけでなく人気も掴んでいく。1RKOで圧倒的な力を見せつけるようになったマギーは同階級での対戦相手が見つからなくなり、ウェルター級に上げて英国チャンピオンとタイトルマッチに挑む事になった。

フランキーはマギーにゲール語で“モ・クシュラ”と刻まれたガウンを与えられてリングに上がり、栄光の勝利を掴む。
マギーはなおも勝ち続けて大金を手にするも、質素な生活を続け、やがて母のために一軒家をプレゼントする。しかし家があると母は生活保護が打ち切られるので、“一軒家は要らないから金だけよこせ”とマギーを罵る。
やがてマギーはファイトマネー100万ドルのWBA女子ウェルター級タイトル戦に挑戦する事になった。チャンピオンのビリーは肘打ちや倒れた相手にもパンチを打ちこむ極悪非道なチャンピオン。
その世界戦でビリーは肘打ちなどでマギーは目の上をカットするが、マギーが終始有利に試合を運ぶ。そしてビリーをKO寸前まで追い込れたところでゴングが鳴る。その後、マギーがコーナーに戻ろうとした時にビリーが突然マギーにパンチを浴びせ、マギーはコーナーの椅子に頭から突っ込んで病院に搬送されてしまった。
マギーは人工呼吸器がないと呼吸ができず、脊髄損傷で全身不随の寝たきりとなる。
フランキーはマギーにつきっきりになり、多くの病院に相談するが回復は絶望的であった。
病院でリハビリを続けるマギーの元に、母親、兄弟が弁護士を連れてやってくる。母親達家族は、マギーの財産を母親名義にしようとペンを口にくわえさせて同意書にサインをさせようとするものの、マギーはそれを強く拒否をして家族と絶縁する。
そこからのマギーとフランキーの戦いの続きは、本編をご覧ください。
映画「ミリオンダラー・ベイビー」のキャスト

ジムのオーナー、フランキー役は、映画界のシーラカンス、クリスト・イーストウッド。90歳ですけど現在でも現役バリバリです。この作品出演時は74歳ですけど、衰えない貫禄を見せつけています。この作品では笑顔一つ見せず終始しかっめつらをしていたイメージでしたが、マギーが試合で倒れてから精力的に優しく看病する時の表情は天使に変わっていました。頑固な年老いたジムのオーナーという雰囲気を見事り出していて、この人はやっぱり天才でした。演じるだけでなく同作品でアカデミー作品賞と監督賞を受賞しています。100年に1度の天才なのでしょうね。
主人公のマギー役を演じるヒラリー・スワンクは決して綺麗じゃないですけど、不器用やけどひたむきな女性ボクサー役が認められて、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞しています。ヒラリー・スワンクはマギー役と同じように、幼い頃にトレーラーハウスで貧乏時代を過ごした事があるので、目の奥に潜む、もの悲しさは本物でした。アクティブにリングで戦った後、ベットの上で表情だけで演じるという難しい役を完璧にこなしています。十分に主演女優賞に値する実力です。
エディ役のモーガン・フリーマンは作品に重みをもたらしてくれる存在で、この作品でも独特のナレーションで語りかけてくれています。トレーニングを続けるマギーを優しく見つめる眼差しと、優しく声を掛ける姿は彼らしい説得力のある演技です。
映画「ミリオンダラー・ベイビー」のストーリー

個人的にロッキーのようなサクセスストーリーは嫌いじゃないので、マギーがフランキーにけなされながらも地道に勝利を重ねて世界タイトル挑戦まで上り詰めたストーリーは爽快でした。
しゃあけど、31歳の素人の女性が、いくらカリスマのトレーナーの力といっても、たった1年半で世界戦に挑むっていうのも、どうかなと思うけど、その舞台で反則で頭を打たれて寝たきりになるって、相当強引かな、、とも思いました。
ロッキーと違うのはハッピーで終われない結末になってしまって、この映画の登場人物の中で一体誰が幸せになったんやろうか、、、辛うじて、フランキーの優しさが、主人公のマギーの心を満たしてくれたところは救われました。何にしても、どうもスッキリしない切ないエンディングでした。
映画「ミリオンダラー・ベイビー」を観て考えた事

クリスト・イーストウッドが、この作品に込めた思い、伝えたかった事はなんやろか、、と何度思い返してみても答えは出ませんでした。
諦めずに夢に向かって成功する事でもないし、師弟愛の強さでもないし、ハングリー精神の重要さでもないし、ほんまに分かりませんでした。
無理矢理考えたのは、選手の支えとなるトレーナーたるもの、根性や技術ではなく、選手の命を最優先に考える事が一番重要だという事かもしれません。
世の中にも、結果を残すために選手を潰していったトレーナー、コーチは沢山おり、昔は練習中の水分補給もできない、とんでもない原始時代でした。
特にボクシングは、今でこそ、一方的な試合はレフリーストップで直ぐに試合を止めるようになりましたが、昔は、相手が倒れるまで試合を止めない野蛮なスポーツで、引退後に頭がおかしくなる選手は少なくありませんでした。
トレーナーのフランキーがマギーに頻繁に語っていた「どんな時でも自分を守れ」という言葉は非常に深い言葉のような気がします。
どれだけ体を鍛えても、リングでどんなに威勢を張っていても、まずは自分を守るために心を鍛えなければなりません。先日の悲しいニュースのように自分の心が弱いと自分を守れません。何でも情報が交錯する今の時代に一番重要なのは、心が最強になる事だと思います。
