2014年公開(アメリカ)166分
監督:リチャード・リンクレイター
個人評価:★★★★☆
キャスト
メイソン・エヴァンス・ジュニア:エラー・コルトレーン ※本作の主人公
オリヴィア・エヴァンス:パトリシア・アークエット ※メイソンの母親
サマンサ・エヴァンス:ローレライ・リンクレイター ※メイソンの姉
メイソン・エヴァンス・シニア:イーサン・ホーク ※メイソンの父親
映画「6歳のボクが、大人になるまで」あらすじまとめ
6歳になるメイソンはママのオリヴィア、姉サマンサと3人でひっそりと暮らしています。
子煩悩な父親メイソンパパは、週末になると子供達を迎えに来て一緒に過ごすか良いパパになっていました。
母親オリヴィアは完全に夫への気持ちが冷めてしまって、シングルマザーとして生きていく決意をしています。そして故郷に戻って立派に大学教職の資格を取りました。
母親オリヴィアは、今度は子連れの大学教授と恋に落ちて再婚して大家族で生活を始めるんですが、実はアル中だった夫との大家族生活は崩壊してしまいました。
それから数年が経って、母オリヴィアは大学講師、メイソンやサマンサも既に思春期を迎えていました。
暫くシングルマザーだった母オリヴィアは、大学の生徒で元兵士だった男性と恋をして再婚し、中古の一軒家を購入しましたが、金銭問題で結婚生活は破綻して、又離婚してしまいました。一方で、父親メイソンパパは新しい女性と再婚して子供を授かり、幸せな結婚生活を送っていました。
姉サマンサはテキサス大学に入学して寮生活を送り、メイソンも高校生活でバイト、恋愛と青春を謳歌します。そんなメイソンも、恋人との別れや、高校卒業を経て、無事に大学入学が決まり、姉と同じように寮生活をするために母親の元を離れる事になりました。
母親は、それまで離婚や再婚を繰り返し、子供達も巣立っていく事に寂しさを覚え、「人生最悪の日やで。私の人生はあっという間や。後は葬式だけやん」と、自分が小さいアパートに引っ越す日に号泣してしまう。
メイソンは大学の学生寮に引っ越し、そこのルームメイト、その彼女と、その友達とでハイキングに出かけます。そこは、子供の頃に父親のメイソンパパと遊びに来たことのある場所でした。その彼女とハニカミながらも言葉を交わしつつ新しい生活をスタートさせる事を実感していきます。
映画「6歳のボクが、大人になるまで」のレビュー

メイソン、サマンサ達の子供の時から大学生になるまでの成長と、元夫婦が年を重ねていく姿を、実際に12年間(2002年夏~2013年10月)という長い歳月をかけて製作された作品です。こんな画期的な作品は初めてです。
同じ役者が特殊メイクもせんと、実際に年を重ねていく作品を製作しようという発想も大胆やと思うんですけど、それを実現できたのは奇跡やと思います。その12年間に4人の誰かが大きな病気で倒れたり、犯罪で捕まったり、役者を辞めたりしなかったのも、大した賭けやったでしょう。実際に、姉サマンサ役のローレライ・リンクレイターは、映画出演に嫌気がさした時期があったようですけど、この作品の監督リチャードは彼女の実の父親でしたんで何とか食い止めたんでしょうね。
父親役のイーサン・ホーク(現在49歳)は、この作品の最初の頃は若さが残る自由奔放な父親役でしたけど、12年後には白髪交じりの落ち着いたベテランの渋い役者に変貌しています。
母親役のパトリシア・アークエット(現在52歳)も、年を重ねるごとに見事に中年体形になってしもてますが、味のあるベテランの風格が備わっています。彼女はこの作品で、アカデミーやゴールデングローブの助演女優賞に加え、数えきれんくらいの受賞をしてはります。実生活もバツ2で初婚は何とニコラス・ケイジでした。

映像の中で進む流行り物も登場していて、X BOX、ハリーポッター、Appleのパソコン、政権もブッシュからオバマに移管、音楽は、当時に流行っていたコールドプレイ、シェリル・クロウ、レディ・ガガとか、リアルタイムで進んでいて生活感も満載でした。
この作品はベルリン国際映画祭、シアトル国際映画祭、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞など数えきれないくらいの受賞をしています。
何気ない12年間の移り変わりを映し出している作品だけやのに、何故かあっという間に2時間40分が過ぎて、不思議な充実感を感じさせる映画でした。
人的に作り込まれた感動とか驚きを一切盛り込んでないので、映画を映画として鑑賞するのではなく、人生があっという間に過ぎていくはかなさも感じました。
最後に、メイソンと女の子との何気ない会話が最後を締めくくっていました。
「なんで、みんな『その一瞬を逃したらあかんで』なんて言うねんやろ。そうやのうて、人生は『逃したらあかん一瞬の連続やで』」
今生きている、この一瞬は二度と戻らへん。後悔のない一瞬を過ごさなあきません。ほんで、悩んでも悲しんでも、笑っても楽しんでも同じ一瞬です。どっちを選ぶかは自分の気持ち一つなんやと思います。